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東大化学の特徴、概要
東大の化学の概要や、特徴について大まかにまとめていきます。
試験時間・問題数
東大の化学は大問が3問で、例年2日目にもう一つ選択する理科の科目と一緒に実施されます。試験時間は理科2科目で合わせて150分。単純計算して75分で大問3問解くことになります。
2000年度以降、3つの大問がⅠとⅡの2つのパートに分かれるようになったため、量は多く、完答は難しいです。また、2017年度から、少し量的に緩和されていますが、それでも問題数は多いです。解ける問題を1問でも多く解くことが重要です。
問題の特徴
- ハイレベル
- 基本の応用が多い
- 他分野にまたがる問題
まず第一の特徴は東大化学の問題はハイレベルです。学習したことの理解度とそれを応用する力、計算力、問題を読み解く力がすべて高水準にあることを求められます。とはいえ、入試問題なので高校生には不可能な問題が出題されることは多分ないのでご安心を。
次に東大の化学の特徴を挙げるとすれば、ただ問題を解かせるのではなく基本的な考え方を応用することを要求するような問題が多いということでしょう。例えば、メタンハイドレートの燃焼式を書くなど。ぱっと見で難しそうに見えますが聞いていることは高校で習うようなことです。問題文で聞いていることを見抜く力が試されます。
また、他分野にまたがるような問題が多いです。この傾向は2000年度を境に目立つようになりました。たとえば、2016年度には有機化学が中心の大問で化学平衡を問う問題が出題されました。このような複合的な問題も東大化学の大きな特徴の一つです。
合格者平均点、合格ライン
科目毎の平均点は公表されていませんが、大手予備校各社の分析を参考にすると、例年の難易度の場合、
理科I類と理科Ⅱ類なら全体の6割から7割程度、理科三類なら8割以上が目安になります。
ですから、本番は
- 理Ⅰ、理Ⅱ 完答×1+半答×2
- 理Ⅲ 完答×2+半答×1
くらいあれば合格ラインに届くかと思います。
東大化学の頻出分野
頻出分野は
- 有機化学・無機化学
- 反応速度・エネルギー・平衡
- 酸塩基の電離平衡
くらいがあげられます。それぞれ簡単に解説していきます。
有機化学・無機化学
一番の頻出は有機化学と無機化学です。有機化学は毎年大問1問を使って出題されるし、無機化合物の知識は多くの問題に絡んできます。知識がないとこれらの分野で得点は厳しいので、高得点を狙うなら意識して学習しましょう。
有機化学は合成高分子やアミノ酸や糖といった天然の有機化合物が頻出傾向にあります。教科書や参考書の中でも後ろの方に配置されていることが多く、特に現役生は学習が後の方になりやすいので、こちらもしっかりとおさえておきましょう。
反応速度・エネルギー・平衡
反応速度や平衡に関する問題はよく見かけます。ファントホッフの反応箱をテーマにした問題など、一見しただけでは難解そうな問題もありますが反応式に注目して解けば解答は難しくはないです。記述問題がよく出される分野でもあります。
酸塩基の電離平衡
こちらも頻出です。とくに二段階の電離や弱酸など様々なイオンが存在する条件下での電離がよく問われます。
東大化学の分野別対策
東大化学の各分野の対策です。
長いので皆さんの気になる分野をご覧ください。
物質の構造
教科書の最初の方なので知識があやふやになりやすいと思います。結合の種類やオクテット則など基本的なものとバカにせず、今一度確認しましょう。記述問題も問われるので現象をよく理解して説明できるようにしておくことも大切です。特に二酸化窒素のような特殊な結合をするものは要チェック。過去にも出題例があります。
また東大ではよく、教科書に表立って出ないようなイオン結晶をだすこともあるので、結晶構造を幾何学的に見る練習もしておくといいと思います。
溶液、気体
溶液は凝固点降下、沸点上昇などをよく対策しておきましょう。
気体に関してはヘンリーの法則や蒸気圧の問題がよく出ます。
これらの分野は記述問題が出されやすいので現象の理由も頭に入れておきましょう。また、計算が煩雑になりやすいので計算力もつけておきましょう。
酸化還元
電子の動きを意識することを忘れないでください。燃料電池や電気分解がよく出されるので陽極と陰極での反応をよく確認しておきましょう。
反応速度論、化学平衡、熱化学
東大は反応の理論に関する問題がよく出ますし、他の分野とからめて出題される事もあります。
活性化エネルギーやルシャトリエの原理に基づいた説明など、記述がよく問われるので反応が起こる理由などを常に意識して学習してください。
酸塩基
酸塩基の中でも電離平衡の問題がよく出題されます。緩衝溶液や、二段階の電離は発展的な内容で東大ならば出題される可能性が高いです。問題集などでそのような問題を見つけたら、対策をしておきましょう。どんなに複雑な問題でも溶液中のイオンの総量に注目して解くことを忘れないでください。
無機化学
この分野は知識がないとどうにもなりません。無機化合物が中心の問題に加えて、他の分野の問題の小問で性質や反応式を問われることがあるのでしっかりと抑えておきましょう。
イオンの水溶液の色、気体の色、代表的な反応など全てにおいて抜けがないように覚えていください。資料集などを使って視覚的に理解すると覚えやすいと思います。
余談になりますが、東大は錯体の問題がよく出ます。その中にはあまり聞かないような金属が出ると思いますが、問題をよく読み、イオンの価数に注目すれば大丈夫です。
有機化学
この分野も無機化学と同様に、知識が重要になってきます。教科書を中心に、コラムなどちょっとした所に書いてあるような反応にも注目してみてください。特に色や呈色反応、性質は構造決定のヒントで出されることが多いので確実に覚えましょう。
また、簡単な脂肪族炭化水素や芳香化合物の反応(例えばベンゼンからフェノールを合成するとかアセチレンに水を付加するなど)は数が多いとともに問題を解くヒントとして必須なので、フローチャートにするなどしてなんとしてでも覚えてください。
前にも述べた通り、ここ数年は高分子化合物や天然有機化合物が頻出事項になっています。覚える事項も多く、学習が後に回って弱点になりやすいのでここもしっかりと抑えておきましょう。
この分野も資料集を参照すると化合物の用途や色などが視覚的に理解しやすくかなり役立ちます。
東大化学の時期別勉強法
高1から高2
この時期は、学校での学習を含めて基礎を固める時期です。問題演習はテスト前とか復習とかでチャレンジする程度で。本格的にする必要はないです。それよりも基礎力をつけることが最優先です。
学校の授業の進度では大抵の場合遅いと思うので、適宜自学自習を進めるのが望ましいです。遅くとも、高2が終わる頃には有機化学まですべての基礎を身につけておきましょう。
高3
演習を順次始めましょう。最初から過去問を解くのではなく、焦らず問題の難易度を上げ、最後に過去問を持ってくる形にするといいと思います。問題演習をする中で、できていないなと感じた分野はその都度、基礎に立ち返って復習してください。適当なままで放っておくと後から復習しようとしても時間が足りなくなります。
もしも学習が追いついていない場合、高3夏が最終ラインと思って学習しましょう。
センターまで
センター優先でいきましょう。センターはセンター試験に向けた勉強でないと対策できません。二次試験も気になるとは思いますが、センターで足切りを突破できないと意味がないので、ぐっとこらえてセンターを乗り切ってください。
直前期
ひたすら過去問や問題集で演習しましょう。
センター直後は二次試験モードに切り替えることを意識してなるべく数をこなす感じで。本番直前は演習するよりも調整と行った感じで、試験時間なども意識しましょう。
筆者の場合、本番直前は本番を意識して本番と同じ時間帯で同じ試験時間で演習するなど、演習する数よりも本番の時間感覚に慣れていくことを意識しました。
あとは寝る前などちょっとした時間でいいので英単語と同様、知識の確認なども忘れずに。
当日
今まで使った参考書、ノート、自分が弱いところをまとめたメモなどを試験場に持っていくと安心できるかと思います。
自分がやってきたことを信じて頑張りましょう。
東大化学の採点は?
採点基準などを公表していないのでなんとも言えませんが、指示されている問題以外は算や途中過程を書かなくていいと思います。逆に指示されている問題は途中式や、考え方を書いておくと部分点などの恩恵はあるかもしれません。
模試はどのように活用するか
大手予備校の主催する東大模試の問題は本番の2倍程の難易度があり、東大志望とはいえ高校生に考察させるのに多少無理があるような化合物や問題が普通にでてきます。
ここで判定が悪いからといって失望するのではなく、どのように考えるべきだったかとかを振り返って次に繋げましょう。
また、抜けている知識や苦手な分野に気づける貴重なチャンスなので復習は念入りに。
受けすぎない程度に受けるといいでしょう。
勉強する上で意識しておきたいこと
全体を見通す
完答が難しい東大化学で目指すべきは一点でも多く取ることですが、そのためにはどうすればいいでしょうか。
それは全体を見通すことです。目標とする問題数までどれくらいなのか全体を見通し、もう一方の選択科目もふくめた時間配分ができるかが合格への鍵です。
東大の理科は2科目同時におこなうので時間配分が難しいです。問題を解きながら、もう一方の科目がどこまで解けているかいつまで時間を割けるのか、常に意識しておきましょう。
そして、1つの問題に固執しすぎず、飛ばして後に回す判断力も重要です。
東大の化学は問題の配置が少し工夫されていて、前の方に時間のかかる計算問題が、後ろの方に比較的解きやすい問題が配置されていることが普通にあります。そういったときに時間がかかるものは後回しにして、できる問題から解くようにする判断ができれば得点は上がるはずです。
計算力
ここでいう計算力は正しく立式し、正しく計算し、有効数字まで適切に考慮できる力だと思ってください。
東大化学の問題は色々な要素が含まれており、何を求めていて必要なものがなにか見失いがちです。
ですから、問題を解くときは何を求めるのか、必要なもの、式は何か常に意識しておいてください。また、桁数が多く計算が煩雑なこともあるので計算を簡略化する工夫も忘れずに。
東大化学に基本事項は必要ない?
東大の化学の対策で基本的なことはでないから難しいことだけやっていればいいと思っていませんか?
結論からいうと基本事項は必要です。
確かに東大の化学は2000年代から2010年代のはじめまで応用的な題材を扱っており、問題も難易度が高かったので、基本的なことは必要ないと誤解することもあると思います。しかしながら実際はそうではないようです。
2017年度以降、基本的なことを理由まで理解しているか問うような問題が多くなり、以前ほどの難しい問題は減少傾向にあります。
このことから一番大切なのは基本的な知識を理由まで含めて理解していることであると言えるのではないでしょうか。そもそも応用的な思考も基本的な力があってこそです。そこを取り違えずに勉強できるかも勝負の鍵になってくるでしょう。
余談にはなりますが、2019年度では出題の意図が発表されました。どのような力が必要なのか参考にしてみるといいと思います。(出典:東大HP)
東大化学おすすめ参考書!
重要問題集
演習を始めたばかりに使うことをおすすめです。
難易度は中堅から難関の易しめな問題がほとんどで東大的には物足りないかもしれませんが、最初のうちは問題になれることを重視しましょう。
新理系の化学100選
駿台出版から出されている上級の化学問題集です。
厳選された問題ばかりで一歩上の考え方や応用力を身につけるのに最適です。ある程度演習を積んだころから受験直前まで使える優れた演習書だと言えます。
難易度は上級者向けですが、東大志望なら一度手に取ってみることをおすすめします。
東大の化学25カ年
対策は過去問が一番です。幸いなことに東大の過去問集は多くの年度分がまとめて出版されています。なるべく多くの過去問で演習を積んでおきましょう。
過去問を解く上で一つアドバイスをしておきます。
2000年度より前は最近と比べて問題数が少ないです。また2000~2016年度は問題数が多くて難易度も高いのに加え、最近の傾向とは少し異なっています。ですが、問題を解く練習にもなりますし、傾向が逆戻りする可能性もあるので飛ばす必要はないと思います。
まとめ
東大の化学は難しく、良問ぞろいですが決して手も足も出ないものではありません。
繰り返しになりますが、一番大切なのは「基本的なことを理由まで理解していること」です。
このことを忘れずに目標に向けて邁進していってください!
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