高校3年生の5月
2人とも頭を悩ませていました。
というのも、2人は少し違う悩みを抱えていたのです。
3年生、1学期の中間テスト、そして河合塾の第2回の全統模試で少し変わった結果が出てきました。
たかのりくんは、
相変わらず定期テストでの成績は好調です。
授業を真面目に受けて
予習復習も学校課題も怠りませんでした。
ですが、
なかなか模試の成績が伸びないのです。
なぜだかわかりません。
不思議なことに模試ではなぜか、
毎回志望校どれもD判定やE判定ばかりでした。
「やってるはずなのにな…なんでだろう…」
何が間違ってるのかわからないまま、少し不安を感じていました。「このままで大丈夫なのかな…?」そんな漠然とした不安を感じていたのです。
ですが、やることは1つ。
頑張って勉強するしかありません。
「模試対策もしなきゃ…でも勉強時間が足りない…もっと頑張ろう…」
そう考えて、1日10時間以上、勉強する日も増えてきました。
一方・・・
ひろくんは、
相変わらず成績はそれほどよくありません。
でも、勉強が少しずつ身になってきていることを感じています。
定期テストは相変わらず、赤点にならないギリギリの範囲で、40〜50点程度でしたが、
模試の成績は
少しずつ上がってきています。
(未だ学年の半分以下でしたが…)
その結果を自慢して、友達からは相変わらずバカにされています。「お前、まだ半分じゃねぇか!笑」なんて。でも当のひろくんは楽観的なのか、お調子者なのか、こんな悩みを感じていました。
(まあ、いけそうだわ!
でも、ちょっと勉強めんどくさいよな…
もっとラクに勉強できねぇのかな…?)
そんなひろくんの姿を見て、
たかのりくんは少し焦りを感じます。
(まあ、たまたまだろ…)
なんていう余裕な気持ちもあります。
ただやっぱり(このままで大丈夫かな?)なんて少し不安もありました。
(模試対策もするから、これからグンと伸びてくるはず)と、特に大きくは気にしませんでしたが。
そして「ここが受験を決める天王山」と先生が口酸っぱく言ってくる運命の夏。
高校3年生の8月です。
その頃の2人は・・・
不真面目なひろくんが
上位の成績
ガッツポーズをしていたのは、
あろうことか「ひろくん」でした。
焦りに焦っていたのは「たかのりくん」です。
真面目にコツコツと学校の授業を受けて、
毎日10時間以上勉強してきたはずのたかのりくんは焦りに焦っていました。
「どうしよう、どうしよう…」
どれだけ勉強しても、
センター模試で8割が取れないのです。
模試でも7割が限界。
覚えても覚えても点数が伸びません。
むしろ勉強すればするほど、
忘れてしまってることに気付き、
どんどんやらなきゃいけない勉強が増えていきます。
模試の判定もまだE判定とD判定をウロウロするあたりの成績のまま。英国数の点数も120点後半、得意なはずの英語も142点と7割以上のラインを超えられずにいました。
他の科目も勉強しなきゃいけないのに、
やったはずの知識もどんどん抜けて、もうどうしていいかわかりません。
「俺って頭悪いのかな…」
と自信も粉々に砕かれてしまいました。
一方・・・
なんと、ひろくんは
一気に成績を伸ばしていました。
模試でも得意科目は9割を超え、苦手でも7割止まり。全体で8割は余裕で超えていました。
当然、偏差値も60を超え、
校内順位もトップクラス。
「おい!お前いきなりどうしたんだよ!」なんて友達からも先生からも言われ、彼も鼻高々です。
「別に対して勉強してねぇよ〜」
なんて言いながら、内心ニヤニヤ。
「やっぱり俺、やればできんじゃん!」
なんて確固たる自信をつけていました。
(もうセンターは楽勝だな)
なんて考えて、
すでに国立2次の
試験対策を始めていました。
問題を解いてもスラスラ解けるし、新たに覚える知識も頭の中にスーッと入ってきます。
しかも、
定期テストの勉強を
一切していないはずなのに、
なぜか定期テストでも学年トップクラス。
(あいつ、やばいよ…)
なんて学校中でも噂になるほどです。
その姿を見て・・・
俺の方が絶対
勉強してんのに・・・!
と納得いかなかったのはたかのりくんです。
「おかしい、おかしい…!」と内心、情けなさと悔しさ、嫉妬が湧き上がってきます。
ひろくんの成績を耳の端で聞きながら(なんであいつが…)なんて苛立ちが抑えられません。
それに実際、
ひろくんは夏休みの間「自習する」なんて言いながら、自習室で昼寝をしている姿も見ていたのです。
やっぱりあいつは頭が良くて、
俺の頭が悪いんだ…
そんな絶望を感じて、余計に不安になってきます。いよいよ、どうしたらいいかもわかりません。
そんな彼は先生に頼ることにしました。
「先生、どうやって勉強すればいいですか?」
しかし、先生の答えはこうでした。
「本当に勉強量足りてるか?
もっと頭に入るように考えた方がいいぞ。
今まで頑張ってきたんだ。お前ならできる」
もっともっと、
勉強しないと・・・!
そんな発破をかけられ、(やっぱりやるしかない…もっと頑張ろう…!)そう考えたたかのりくん。
それから、問題集を何度もノートも解いて、わからないところだらけのノートを持って、担任に解説を求めに行ったりもしました。
しかし、必死に解説を聞いてるのに内容もなかなか理解できません。諦めて「わかりました…」と、わかったフリをすることもありました。
でも、自分なりに考えました。「この方がいいよな」「この勉強法がいいんだ」なんて勉強法を調べてみたりして、自分なりに必死に頭を使いました。
その結果、ついに受験が間近に迫ってきます。
高校3年生の11月。
センター試験まで2ヶ月を切り、本格的にセンター試験対策で追い込まれてきます。
学校でも、センターを想定した問題を解く授業が増え、実践的な問題演習が増えてきます。
その頃・・・
(なんでだよ…なんで…)
やっぱりたかのりくんは苦痛の中、勉強を頑張っていました。
学校の演習でも全く解けません。
二次試験ちっくな問題なんて出されたら、
解き方すらわかりません。
そして、センター試験の1ヶ月前、
いよいよ受験本番が迫った高校3年生の12月・・・
センター前、最後の模試、
センタープレがありました。
その結果は・・・
センタープレ68%、第一志望E判定
学年順位 256/421
やっぱりひろくんの結果は奮いません。
自分なりにこの1年間頑張ってきました。精一杯頑張ったのは事実です。
でも、結果が伴いません。
なぜなのでしょう。
もう手遅れなのかもしれません。
「やっぱりダメだ…」
自分でも手応えがなかったのはわかっていました。
問題を解いてる最中もわからない問題がたくさんありました。覚えてない公式もありました。
でも、どこかで見ていたはずなんです。
確かに解いたことがあるはずなんです。
「オレの頭が悪いんだ…」
1年前は想像すらしてなかった絶望を感じています。大学受験のせいで少しは自信があった科目でさえ、その自信は粉々に打ち砕かれました。
センタープレの結果を踏まえた受験最後の面談。出願校を決めるための面談です。
「たかのり、第一志望は厳しいぞ。
頑張ってきたのはわかるが、
受けるなら浪人覚悟でな…」
先生からそれを言われても、たかのりくんは「はい」としか言えませんでした。
親になんて報告をしたらいいかもわかりません。
「あれだけ協力してくれたのに…」
そんな情けなさが胸の奥から込み上げてきます。
「お金もたくさん払ってもらったのに…」
先生から言われた 「浪人」という言葉が
脳裏をよぎります。